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ブログ> 2016.8.9.

終戦の日に小学校で観た『裸足のゲン』実写版と母のフラッシュバック

71年前の8月15日に、 何度も、私たちが、テレビやラジオで耳にしている
「堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍び・・・」という
昭和天皇の朗読放送がラジオから流れ
人々は、ひざまずいて泣いていたんだよ。と、
私は、生前の祖母から、終戦の日の記憶を聞いていました。


そして、また、私の祖母よりもかなり若い年代であったであろう、
当時の、小学校の校長先生は、
私が小学校高学年であった、ある年の終戦の日の夜に、
体育館で、白黒の画像の、ある古い映画を見せてくれました。


私や家族、また、友人と、そのご家族も、どんな映画なのかを全く知らずに、
私は、母と弟と一緒に、楽しみにしながら、小学校の体育館まで出向いたと記憶しています。


当時の小学校の体育館は、空調設備がないのはもちろんのこと、
今のような映像設備はなく、
光を反射させて、フイルムの画像を体育館の壁に映し出すような
簡単な映写機だったために、光が干渉しないであろう
夜の放映になったのかもしれません。


薄暗い体育館の中で放映された映画とは、
『裸足のゲン』実写版でした。かなり古いフィルムで、所々画像が切れていたような、白黒のものでした。
1976年に公開されたカラー作品の方ではありません。
もちろんアニメーションでもありません。


その、古い実写版では、おそらく実際に被爆された方が出演なさっていたと思われ、
”むごすぎる”としか、言いようのない映像も多々含まれていました。


小学生だった私にとって、その映画は、ショッキングであったことはもちろんの事、
全身で、恐怖、悲しみ、無力感、不安感を体感したことを覚えています。


その映画は、私だけでなく、小学校低学年くらいの子供にとっても
ショッキングであったことは、想像に容易いでしょう。


*****  母の反応  *****


私は、その映画を見終わった後も、恐怖が続き、
一人でいることが怖いと思う程でしたが、
子供にとって、安心感をくれると期待するであろう、母の反応からも
私は安定を求めることはできませんでした。


母は、戦前生まれで、母の幼少期は、ほとんど戦前、戦中、戦後の混乱期と重なり、
戦争とは、母の現実であり、根強く母の中にあるトラウマです。


その映画が終わり、母は、怒っていました。
「こんな夜中に、小さな子供に、この映画を見せるために、
薄暗い体育館まで、なんで、呼んだのか!」
と、カンカンに怒っていました。


今の私が考えれば、この映画を見る事で、母の忘れていたトラウマが呼び起こされ、
フラッシュバックを起こしたのだろう、とわかりますが、
当時の私は、何が何だかわからない状態です。


私は、映画がショッキングであった上に、家族が険悪な雰囲気でいることが重なり、
その日は、恐怖に震えながら、なんとか寝たような気がします。


*****  優等生のM子ちゃんの言葉  *****


新学期を迎えたある日、
私の恐怖も薄らいだ頃、
私が、優等生のM子ちゃんと一緒に遊んでいるところに、
いつも優しい校長先生は、私達に話しかけてくれて
そして、8/15の夜に観た映画の話になりました。


私は、あの後、とても怖くて、私の母も怒っていました。と正直に話しました。


すると、校長先生は、
「そういう方もいらっしゃると思います。」
とおっしゃったのを覚えています。


そして、校長先生は、M子ちゃんに、「M子ちゃんはどうでしたか?」
と聞くと、M子ちゃんは、こう答えました。


「はい、校長先生、
私は、お母さんから、これは、日本人が忘れてはいけないことだから、
しっかりと見ておきなさいと言われました。」


私は、M子ちゃんのこの言葉を聞いて、初めて、

あの、映画鑑賞の意味は、教育だったのか・・・・!!


ということに、ようやく気づきました。


そして、M子ちゃんのお母さんは、私の母よりも若い、
戦後生まれのお母さんであったことにも気が付きました。


*****  教育が、トラウマにならないために  *****


今の私が、当時の体験を思い出し、
この映画鑑賞の体験が、トラウマになっているとは、とても考えられません。


母の反応がどうであれ、事実を見て、何かを感じ、心で体験できたことは
とても必要なことだったと思いますし、
勇気ある決断をなさった校長先生には、本当に感謝しています。


そして、M子ちゃんのお母さんがおっしゃったように。
日本人として、本当に忘れてはいけないことだからこそ、
このような貴重なフィルムを観られて良かったです。


大人は、事実を伝えるべきだし、
子供には、それを消化できるだけの、たくましさがあると思います。


トラウマになったらかわいそうだから、事実を教えないし、見せないというのも、非常におかしな話です。


しかし、整体師として考えるならば、


実は、心や身体のトラウマとは、
出来事の強弱によって、
そのトラウマの強弱が決まるわけではなく、


身体の神経システムが、どう受け止めたかという、身体のレベルでの問題なのです。


なので、このようなフィルムを観る事で、歴史の事実を学ぶためには、
トラウマにならないための、大人のサポートが必要だと思います。


教育が、ただのトラウマになっては、本末転倒です。


神経系のシステムに大きく影響を与えるであろう、画像、動画などに触れる際には、
大人が、子供の身体に触れ、そして、肉体レベルで安心させる、
そして、人は歴史から学ぶことができるのだということを教えることが、
非常に、大切なことだと言えるでしょう。


*****  最後に  *****


しかし、私は以前、広島出身の女性の方に、広島では、他県以上に
この原爆の体験を忘れてはいけないという教育に対する思い入れが、とても強いと伺ったことがあります。


もし、そうであるならば、なおさら、他県の大人以上のサポートが必要です。


実際、その女性の方は、戦後生まれでありながら、
自分の体験のように、原爆の恐怖が、身体に根付いていて、
幼少期には、夜、突然、その恐怖に襲われ、お母さんのお布団に入って
お母さんに恐怖をぬぐってもらっていたと、おっしゃっていました。


この方のお話を伺った時に、私の映画鑑賞の体験とは、また違う質の教育を感じました。


”それは、トラウマか?と教育か?”というテーマは、
私のような整体師が扱うだけでは、全く、十分ではなく
これからは、もっと、広い分野で取り上げられ、
議論されることが、必要のように思います。


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